孫の代わりにイラクで戦おうとして、裁判沙汰になったおばあちゃんたちのことを覚えているだろうか。
59歳から91歳までのおばあちゃん18名が、「孫たちにも長く幸せな人生を送って欲しい」と考え、若い兵士の身代わりとなるため、昨年10月、タイムズ・スクエアの新兵募集センターで従軍を志願した。
その際、警察との間でトラブルが発生して逮捕され、4月末、裁判で争うことになった。その模様は、本誌5月2週号でお伝えした通りである。
一致団結し、「おばば平和旅団(Granny Peace Brigade)」と名乗り始めた彼女たちは、注目を集めたこの裁判で無罪を勝ち取ると、さっそく次の行動計画を立てた。裁判直後、「6月末にデカイことをするからヨロシク」と、野望に燃える若者のような文面のメールを私に送ってきたのだ。
それが今回の「ニューヨークからワシントンDCへの平和行進(Peace Trek)」だ。タイムズ・スクエアの新兵募集センターから出発し、そのまま歩いて首都まで向かうという。
と言っても、読者がこの記事を読んでいる時にはもう、(すべてが順調に進んでいればの話だが)おばあちゃんたちはDCに到着し、ブッシュ大統領のお膝下(ひざもと)で何らかの行動を起こしているはずだ。平和行進の計画を伝えるメールで、リーダー格のジョーン・ワイルさん(74歳)がこう書いている。
「私たちは7月4日にDCに着く予定。そこで、既製品の花火よりもまばゆい花火を打ち上げられたらいいな、と思っているの」
この部分を読んだ私は少し不安になった。「いったい何をするつもりだ? 既製品の花火よりもまばゆい花火……。もしかしてそれは、言い換えると、爆弾、というやつではなかろうな」
というのは冗談だが、この原稿を書いている時点では、果たして彼女たちが本当にDCにたどり着けたのか、そして、DCにたどりついて何をしたのかは分からない。私がこれを書いているのは6月25日。おばあちゃんたちは、独立記念日にDCにたどり着けるよう、6月24日土曜日、雨が強弱を変えて降り続くあいにくの天気の中、元気一杯に旅立った。
締め切りの都合で、行進初日の模様しかお伝えできないのが残念だ。しかし写真を見てもらえれば、反戦にかける彼女たちの真剣な思いと、そして同時に、彼女たちの愛らしさを感じてもらえるだろう。