反戦おばば、歩いて都へ

文と写真:細田雅大   雑誌掲載時:2006年 6月

デカイことをするからヨロシク?

Grannies singing together at Times Square

強い雨の降る中、タイムズ・スクエアで行われた出発式。「God Bless America」の反戦替え歌「God Help America」で景気づけ

Grannies marching in Manhattan

「Bring The Troops Home Now Alive!」(兵士たちを今、生きている間に母国へ帰そう)と連呼しつつ、ブルックリンへ移動。DCとは正反対の方角だが、ブルックリンにちょっと用があるのだ

Grannies walking over the Brooklyn Bridge

ニューヨークの観光名所、ブルックリン橋を歩いて横断。天気も味方し、雨脚が弱まった。最高齢のメアリー・リュニオンさん(91歳)が先頭だ

Grannies at U.S. marines recruiting center in Brooklyn

橋を渡り終え、ブルックリンの新兵募集センターへ。海兵隊のオフィスが開いていた

Grannies negotiating with a officer in U.S. marines recruiting center

おばばたちは「孫の代わりに従軍したい」と交渉開始。丁寧に応対してもらえたが、従軍はできなかった

Grannies gave flowres to the U.S. marines recruiting center

それではと、平和への願いを込めて、新兵募集センターに花のプレゼント

Jenny Heinz gave a handout to a driver

勢いが余ったのか、停車中の運転手にも反戦の訴え

Grannies in front of the U.S. marines recruiting center

いくら元気でも、DCまで歩き通すのは無理。各地の要所以外は、チャーターしたバスで移動する。行進初日、お疲れさまでした

 孫の代わりにイラクで戦おうとして、裁判沙汰になったおばあちゃんたちのことを覚えているだろうか。
 59歳から91歳までのおばあちゃん18名が、「孫たちにも長く幸せな人生を送って欲しい」と考え、若い兵士の身代わりとなるため、昨年10月、タイムズ・スクエアの新兵募集センターで従軍を志願した。
 その際、警察との間でトラブルが発生して逮捕され、4月末、裁判で争うことになった。その模様は、本誌5月2週号でお伝えした通りである。
 一致団結し、「おばば平和旅団(Granny Peace Brigade)」と名乗り始めた彼女たちは、注目を集めたこの裁判で無罪を勝ち取ると、さっそく次の行動計画を立てた。裁判直後、「6月末にデカイことをするからヨロシク」と、野望に燃える若者のような文面のメールを私に送ってきたのだ。
 それが今回の「ニューヨークからワシントンDCへの平和行進(Peace Trek)」だ。タイムズ・スクエアの新兵募集センターから出発し、そのまま歩いて首都まで向かうという。


既製品の花火よりもまばゆい花火?

 と言っても、読者がこの記事を読んでいる時にはもう、(すべてが順調に進んでいればの話だが)おばあちゃんたちはDCに到着し、ブッシュ大統領のお膝下(ひざもと)で何らかの行動を起こしているはずだ。平和行進の計画を伝えるメールで、リーダー格のジョーン・ワイルさん(74歳)がこう書いている。
 「私たちは7月4日にDCに着く予定。そこで、既製品の花火よりもまばゆい花火を打ち上げられたらいいな、と思っているの」
 この部分を読んだ私は少し不安になった。「いったい何をするつもりだ? 既製品の花火よりもまばゆい花火……。もしかしてそれは、言い換えると、爆弾、というやつではなかろうな」
 というのは冗談だが、この原稿を書いている時点では、果たして彼女たちが本当にDCにたどり着けたのか、そして、DCにたどりついて何をしたのかは分からない。私がこれを書いているのは6月25日。おばあちゃんたちは、独立記念日にDCにたどり着けるよう、6月24日土曜日、雨が強弱を変えて降り続くあいにくの天気の中、元気一杯に旅立った。
 締め切りの都合で、行進初日の模様しかお伝えできないのが残念だ。しかし写真を見てもらえれば、反戦にかける彼女たちの真剣な思いと、そして同時に、彼女たちの愛らしさを感じてもらえるだろう。





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